FIRE暮らしの独り言

アーリーリタイア済み個人投機家の備忘録

不良少年に何を言っても通じないだろう

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思い出話

「東京リベンジャーズ」の話をしてから思い出したことがあるので、以前あったことを書いていこうかと思う。その街が自分に合うかどうかは住んでみないとわからない、ということで色々なところを借りては住みを繰り返していた。そんな時に出会ったことのお話。勿論特定されぬよう多少なり誇張やフェイクを織り交ぜていくが、そこはご了承願いたい。

とても静かな場所だった。

郊外。街から離れすぎず近づき過ぎず適度な喧騒が心地よい、そんな場所。多少の不便さはあるもののとにかく住みやすい。刺激が無いと嘆く人もいるけれど、刺激は時に波風を立てるものだしこれが良いんじゃないかと思っていた。が、そんな場所にも波風が立る時は来る。

最近やけに煙草の吸殻が落ちている。

普段注意深く地面を見て歩いているわけでは無いが、白く細長いものというのは地面の上でとても目立つ。住んでいる場所の周りが汚いのはどうにも我慢できないタチなので、拾ってはみるものの、大概同じような場所にまた落ちている。時にはコンビニで買ったであろう食べ物のごみも落ちていたり。この辺りは子供もよく通るから何かあってはいけないと思い、その場所を注意深く見るようにした。

犯人は割とあっけなく見つかった。近くの一戸建て賃貸物件に越してきた一家の長男だった。どう見ても高校生なのでそもそも煙草は…とは思ったが、まあそんなことお説教しても無駄だろう。何せ親も知ってのことだから。この時点でもう面倒なことに足を突っ込んでしまったと思ったが仕方ない。とりあえずチャイムを鳴らし、注意をしてみることにした。

証拠でもあるんですか?

やはりこうなるか。二言三言交わしてああ、これは話の通じるタイプの人じゃないと感じた。現物を見せても頑なな姿勢は変わらない為、ごみはこちらで処理しておくから、今後はやめてとだけ伝えた。多分効果は無いだろうなと思っていたがその後ほうぼうから苦情が飛んできたようで、鬼のような形相だったお母様も渋々ではあるが暫くして自分のところにも謝りに来た。

これにて一件落着、とはならない。一度やった者はほとぼりが冷めればまた繰り返す。多少なり依存性がある煙草なら尚更だろう。こうなってくるといたちごっこになるだろうと踏んで、何か別の手立ては無いかと考えた。彼がそうするのは必ず理由があるはずだ。そういえば、お母様と会話した2度、どちらも同じことを言っていて、ずっとひっかかっていた言葉がある。

もう自分で考えられる歳なんで。

随分突き放した言葉だと思った。自分の子なのに責任は私にはありません。そんな風に感じた。これが理由、もしくはその一端なのではと。予想は当たった。

五人兄妹、その長男。親は年の離れた四人の娘に付きっきりで、長男を「もう自分で考えられる歳だから」という理由で、コミュニケーションを疎かにしていた。結果彼は居場所を無くし、どうしようもないストレスを外に吐き出すしかなかったのだ。

外から見れば一目瞭然なその状況も、当事者達にはわからない。少しの反抗程度なら「そういう年頃だから」で片付けられ、家に面と向かってくれる人が居ない。友達といくらつるんでも根本的な解決にはならず、乾きは潤すことが出来ない。そりゃ外で煙草の一本でも吸いたくなるだろう。

ならばやり方を変えるか。

彼と向き合おうと思った。ただし100%善意からの行動じゃなく、あくまで問題解決の為。自分はそんな良い人間じゃないし、綺麗な話でも終わらせるつもりも無い。ただ今の彼に必要なのは怒ることじゃない、それだけは確かだからということで、怒る以外のアプローチを始めた。

知り合いになるのは思ったよりも難しくなかった。こういう時浅く広くでもいいから色々なジャンルの話を齧っていると本当に役に立つ。意外と素直なところを見ると、「何がよくて、なにがダメなのか、その理由」について誰も説明してあげなかったのかと少し悲しくなった。その後ポイ捨てどころか最終的には煙草を吸うのもやめた。やめろと言った覚えは無いが、恐らくもう煙草は彼の拠り所では無くなったのだろう。結局その後新天地を求め自分が引っ越すまで、特に問題は起きることはなかった。

話を聞き、色々アドバイスはした。そのお陰で彼は魂の叫びを親に聞かせ、親は考えを改め、涙のハグで仲直り!となったかどうかは知らない。まあドラマじゃないんだし劇的に関係性が変化したということは無いようにも思う。

ただ、今回の件で感じたのは、「不良」と括られる彼らは必ず理由を抱えている。厳しく叱るのも勿論必要だ。ただ、そればかりでは反発が生まれるだけだ。もしお困りの方がいるならば、押してダメなら引くではないが、寄り添っても良い、肩組んで友達になってもいい、そういった時には全く別の方法で彼らと向き合って欲しい。